ー二日目ー

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久しぶりに楽しい夢を見た。 でも、それが余計に悲しかった。 目覚めた瞬間、嫌な現実に引き戻されてしまったから。 やはり夢ではなかった。 もしかしたら夢なのかも?なんて考えてしまった俺が情けない。 もう現実を受け入れるしかないんだ。 「蘭那様」 「………何?」 「お着替えを」 「一人で出来る」 「奥様の言いつけですので」 「………わかった」 この人も仕事なんだ。 だから従うしかない。 黙々と服を着せられながら心はどんどん沈んでいった。 着た事もないような高そうな服。 しかも動きにくい。 シルクのブラウスに紺色のリボン。 ここはどこだよっ? ど田舎じゃないのかよ? 冗談じゃない! まるで母親の犬と同じじゃないか……… 「よくお似合いです」 でもいいや。 あの犬みたいに早死にできればラッキーだ。 なんて、初めて死と言う事を考えてしまった。 リビングに行くと、知らない男の人が立っていた。 「蘭那、こちらへ」 「はい」 というか、なんて呼べばいいんだろう…… やはりおばあさまかな? 「彼はこれからお前の世話をする霧島だ」 「よろしくお願いいたします。蘭那様」 「えっ、いえ……俺は自分の事は自分で出来ます」 「今日は霧島と学校へ行きなさい」 「………はい」 話すら無視された。 何を言っても無駄だと知った。 俺の意思はどこにも存在しない。 ただ、呼吸するだけの人間なんだ。
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