序章

3/4
前へ
/128ページ
次へ
 俺とリンは屋根の上を転げまわり、西洋甲冑は勢い余って地面へと落下する。  だが、あの程度では死なないだろう。 「早くどきなさい!」  視界に意識を向けると、俺はリンの上におおいかぶさっていた。リンの甘い吐息は激しく、心なしか顔が赤らんでいるように見えた。 「ああ、悪い。重かったか?」 「そういう問題じゃないでしょ」  リンがともえ投げで、グダグダしていた俺を後方へ吹き飛ばす。背中から叩きつけられる衝撃に俺は息をのむ。  そりゃあ……ないんじゃないの……。 「クッすばしっこいわね。見失なったわ。どっかの馬鹿が作ったと思えない」  俊敏に立ち上がったリンが、なんじゃくに呻いてる俺を鋭い眼差しで見つめる。 「どっかの馬鹿としては、誰かさんが造ってくれといったから造ったわけなんですがね。リン--奥にある紫のワゴンの横にいるよ!」  西洋甲冑も確認されたことに気づいたようで、止まっていた足を再び動かし始めた。 「なんで大声だすのよ。私だって気づいてたのに。馬鹿じゃないの? ※※:氷結:*」  リンの言葉を皮切りに、駐車場一帯に液体窒素をぶちまけたかのような霧がかかる。
/128ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加