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「……大丈夫、か?」
なんとかカーディガンを着たらしい男の子は、俺が近づくとビクッと体を強ばらせた。
今度は俺に怯えているようだ。
ぱっと見た感じでは未遂のようだが、あんなに囲まれてしまっては仕方のないことだろう。
よく見ると、彼はやっぱり小柄な上に可愛らしい顔立ちをした男の子だった。
(こういう子には、きちんと好きな相手と両思いになってにゃんにゃんしてもらいたいものだ、うん)
こんな状況には不似合いな思いが生まれたが、所詮俺もそういう偽善で助けたに等しいから気にしないでおく。
そうさ、だからなおさらあの変態どもにはかける言葉なんかない。
罵声すらもったいない。
俺はしゃがみこんで、未だ怯える彼と目線を合わせ、できるだけ優しく抱きしめてやった。
「…っ!」
「……大丈夫、もう、心配いらない」
彼は案の定一瞬だけ抵抗したが、俺が呟く声に宥められたのか、そのうち力が抜け、胸元をギュッと掴むと声を上げて涙をこぼした。
すまない、俺のキャラ上これ以上しゃべるのは……はばかられるから。
その呟きは心の中に留めておきながら、俺は彼が泣き止むまで黙ってそのまま抱き締めてやっていた。
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