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「わかった、ありがとう。
さて、君は新入生だろう。
今からなら間に合うからクラスに戻ったらどうだ?」
萌え脳内会議から俺を連れ戻した保健医の言葉は優しかった。
この人なら任せられるだろうと思い、簡易椅子から立ち上がろうとすると、服の裾を引っ張られた。
誰に?
「……どうした、健人」
服の裾を掴んだまま離そうとしない健人に問いかけてみる。
「……置いていかないで」
(!!)
寂しそうなその顔に、かつての誰かの面影が被る。
誰か…だって?
はっ――白々しい。
ともかく、そんな奴を置き去りになんて出来る訳なくて。
無言で保健医に視線を向けると、仕方ないなぁと居座ることを許可してくれた。
いやん、優しい。
再び椅子に座り直し、健人の頭を撫でてやる。
あー、無口キャラなんて面倒なもの選ばなきゃよかった!
と、このときだけは思ったり。
だけど、安心したのか健人はゆっくりと瞼を伏せ、しばらくすると寝息が聞こえ始めた。
今だけは、嫌なことなんか忘れてお休み。
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