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大々的な祭りはもう終わったはずなのに、興奮の冷めやらぬ人々はまだまだ騒ぐつもりのようだ
この喧騒は僕にとっては酷く居心地が悪い
だが、僕と手を繋ぐ彼女には心地良いのか、未だ頬を薄く上気させ瞳に輝きを湛えていた
彼女の手を引き、家路を進む
ふと、急にブレーキ
彼女が止まってしまったようだ
何かあったのかとそのまま彼女の方を振り返る
軽く俯いていて表情がよく見えない
「」
ぼそり、小さく彼女が呟く
僕は彼女の言葉を聞くために顔を近付ける
「………たい」
また彼女は囁きに近い音量で呟く
僕は更に彼女に近付いた
あなたを、たべたい
「……え」
いきなり顔を上げた彼女の瞳には静謐で力強い、そう、例えるなら狂気に彩られたような輝きが宿っていて
首に立てられた歯が食い込んだ音がした
(ずっと、おいしそうだとおもっていたの)
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