第19話:悩みの種×2

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「周りが文句言わなかったら好きにしていいって。顧問決まればハンコ押してくれるらしい」 用意周到と言うかなんと言うか、クロアの差し出した紙は、部活認定書。ライドが机から取り出したあの紙であり、すでに彼の署名が済んでいた。 あと生徒会認定の捺印さえあれば、受理されたこととなる。 「…なる、ほど。わかったよ…俺が顧問で今4人。条件の5人には一人足りないが──学園長にどうにかならないか話して」 「聞いておったよ」 カラカラカラと、給湯室との仕切りであるパーテーションをズラし、ずっしりした体格の学園長が顔を覗かした。 「うわっ」 「ふぉっふぉっ。まさかクロアが部活動を運営するまで学園に溶け込んでくれるとはのう。わしは嬉しい限りじゃ」 うんうんと頷くガイア。学園長もガイアも、クロアのZランカー時代を知っており、この学園が彼にもたらす意味も重々理解している。 ギルドマスターの勅命で教師をすることになったガイアも、クロアをフォローするためだったのだろう事は、彼の編入時から薄々と気付いていた程だ。 「で、じゃ。肝心の部活動の内容はどのように考えとるのか」 顔だけ覗かしていた学園長は湯気の立つコーヒー片手に給湯室から出て、手頃な椅子に腰掛ける。 ぎしりという音とともにコーヒーの香りが鼻をついた。 「学園ギルド部って、今のところは。 無償で人助けするような部活だよ…シリアの為になりそうだし、ロゼも自由にしておくより安全かな、と」 「ふむふむ。それはまた新しい発想じゃな。相変わらずやる事なす事に意味づけしたがる癖は抜けんな」 嫌味と言うよりは孫に微笑む祖父のような綻びを見せた学園長は、一口コーヒーをすすると思いついたように人差し指を立てた。 「何か…何か功績を立てなさい。この部活があって良かったなと、周りが思うような功績をじゃな。ただし、ギルド本家の領分を邪魔せんようにな」 「あれ? そんなんでいいの?」 正直言って、クロアにシリア。さらに行動力の塊であるロゼリアがいるだけで大抵の問題は即解決を見るだろうと高を括るクロアに、学園長も微笑みを崩さない。 「別に試験や陥れるものでもない。周りが文句を付けなければいいんじゃよ。ただし、ひと月以内にしようか。マグナルタ教員はやりすぎないよう見張っててあげなさい」 そう言って、学園長も部活認定書に署名した。
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