act3 ―CSAR―

45/46
前へ
/297ページ
次へ
今俺は翼をもがれた鳥を救い出そうとしている。 すぐ下にいるのはその手で生きとし生けるもの全てを紅蓮の焔に変えることのできる兵器を操る兵士だ。 にもかかわらず、同じ軍人で同じ兵士である俺はまるっきり逆だ。俺が使う兵器は人を殺めない。ただ助けるためだけにある。 これは言うまでもなく矛盾している。この世の中矛盾ばかりだが………いや、むしろ矛盾していない方がおかしいという者もいるかもしれない。 だが今ここでの論点は正否を決することでない。それ以前に何が正しいのか何が正しくないのか、本質を見極めることは非常に難しい。 なら何が違い、何が同じなのだろうか…… 目の前の助けを求める彼は人を殺戮する兵器を使い、俺は人を救済する兵器を使う。 よくよく考えてみれば、軍に救難隊という組織があること事態がイレギュラーな気がしてならない。 軍とはいえ日和国の防衛軍は自国の自衛の為だけに存在し、隣国のルシルア軍が保有している爆撃機や航空母艦などの侵略的兵器を保有してはいない。あくまで自衛だからだ。 他国の軍隊と比べ侵略的要素の少ない防衛軍だが、組織自体は紛れもなく軍であり、人間に直撃すれば肢体を千切れ飛ばすことのできる兵器を数多く保有している。 .
/297ページ

最初のコメントを投稿しよう!

333人が本棚に入れています
本棚に追加