覚醒の序章

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翔の体力は落ちていき、同時に走る速度も落ちる。 男の姿はすでに30メートルほど先だ。 「くそっ……!!駄目か……はぁはぁ……」 体力の限界が来て走る事が出来なくなり、その場でしゃがみ込んだ。 翔は自分の体力の無さに苛立ち、自転車を盗んだ男への怒りが心の中から滲み出るのを感じていた。 【なんで俺がこんな目に……。あの野郎が全部悪いんだ……】 【クソ野郎ッッ!!! 自転車返しやがれっっ!!!】 翔は湧き出た怒りを心の中で思い切り叫んだ。 「うわぁっ!!」 と同時に30メートル先の男が悲鳴のような声を発し、自転車の操作を誤り電柱に激突する光景が翔の目に飛び込んだ。 【は?なんだ?コケやがった。 チャンスだ……!】 体力の限界は来ていたが、思わぬチャンスが翔の気力を奮い立たせ、再び男に向かって足を動かす。 男は電柱に激突した衝撃でアスファルトに転げ落ち、履いていたジーンズは破けて足から血を流していた。 翔が男の前に辿り着き、まず確認したのは自転車の状態。 あちこち傷はついているものの、壊れてはいなかった。
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