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「ぐぅ……痛ぇ……」
「自業自得だろ?自転車は返してもらうぞ」
【本当なら一発殴ってやりたいぐらいだが、怪我してるみたいだしな。てか見た感じ怪我をしてるのは足だけなのに頭押さえてるな……頭打ったのか?意識はハッキリしてるみたいだから放っておいても平気だろう。面倒だし、このまま帰るか】
常識的な人間であればこの男を警察に突き出すのだろうが、翔はこんな状況であっても面倒な事を極力避ける性格なので、そのまま立ち去ろうとした。
もちろん男がひったくった鞄の事などすでに頭には無い。
倒れた自転車を起こし、サドルにまたがり漕ぎ出そうとしていたら、後ろから女性独特のヒールを鳴らす音が小刻みに聞こえてきた。
「はぁはぁ……あなたが捕まえてくれたんですか?ありがとうございます!」
話し掛けてきたのはもちろん白いコートの女。
翔はお礼の言葉を聞き、ようやくひったくりの事実を思い出した。
「あ……ああ、いいよ別に。こいつ、俺の自転車を盗んだ奴だから捕まえようと思っただけだし」
「でも捕まえてくれたのは事実だし、本当に助かりました。
えっと、警察に連絡しなくちゃですね」
「俺はもう帰るよ」
「え?でもあなたも自転車盗まれたんですよね?」
「そうだけど、自転車の事はもう気にしてないし警察に話さなくていいよ。
だから後は君に任せるよ」
「うーん、わかりました。
えっと……これお礼です」
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