過去の記憶

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「お母さん、今日もお仕事? 僕寂しいよ……」 バシッ! 頭を掌で勢いよく叩かれた。 「寂しいだって?毎日毎日誰の為に働いてると思ってんだよ! こっちは好きでもない客に体使って、毎日頑張ってんだよ! それもこれも全部アンタに飯を食わせる為だろ! アンタは大人しく私の言う事を聞いてればいいんだよ!」 「でも今日は僕の誕生――」 「うるさいっ!」 何度も殴られた。 少しでもわがままを言えば殴られる。 少しでも口答えをすると蹴られる。 これが俺の日常だった。 母親の言う事は絶対。 幼い頃の俺は母親という存在にいつも怯えていた。 殴られないように。 怒らせないように。 そうやっていつも母親の顔色を伺っていくうちに、人の感情を読み取る事が得意になった。 同時に本当の気持ちを表に出す事をしなくなった。 俺は周りの同級生に比べて考え方もある意味大人びていた。 どうすれば痛い目をみないで済むか。どうすれば人に嫌われないか。 そんな事ばかり考えている子供だった。
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