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運動会?授業参観?
一度だって母親が来たことは無い。
遊園地?水族館?動物園?
一度だって母親に連れて行ってもらった事は無い。
ゲーム?オモチャ?
一度だって欲しいと言った事は無い。
俺はそんな「普通」とは掛け離れた世界で幼少期を過ごした。
俺は母親をどう思っていたか。
「好き」ではなかった。
だが俺の為に夜中まで働いてくれている。だから感謝もしていたし「信用」していた。
それに一度、母親が当時付き合っていた男に捨てられた時
「信じられるのはアンタだけ。
アンタの事だけは信用してるからね」
そう言ってくれた。
俺を必要としてくれている。
その時だけは凄く嬉しかった。
その言葉だけがずっと俺の支えになっていた……。
そして俺が中学を卒業する頃。
金銭面で高校進学は厳しいとわかっていたが、どうしても高校だけは行きたかった俺は母親に土下座をして頼んだ。
金はバイトでも何でもして絶対に返すという約束でなんとか了解を貰えた。
無事高校に進学すると母親に金を返すためと言うよりも、少しでも母親と顔を合わせる時間を減らす為にバイトを始めた。
もちろんいずれ家を出る為に貯金もしたかった俺は休みをほとんど取らずに、学校が終わると深夜までバイト。
そうやって高校時代の大半を過ごした。そのおかげで高校3年になる頃には家を出る資金も貯まった。
――そして
高校3年の体育祭があった日。
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