過去の記憶

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俺は初めて母親に怒鳴った。 今までずっと反抗した事の無かった息子の突然の牙に母親は目を丸くして驚いている。 「確かにあんたはずっと頑張ってきたかもしれない。でもそれは親として当然の事だろ。例え母子家庭でも普通の親なら仕事も家事も両方やるんだよ。でも俺は例え殴られても蹴られてもあんたの言う事を聞いてきた!家事もやってきたしわがままも言った事もない。高校に入ってからは生活費も少しだけど入れてきたじゃないか。あんただけが頑張ってたんじゃない!」 俺は息継ぎもせずに思っていることを吐き出した。 今まで溜まっていたものを爆発させるかのように。 「……そろそろ俺を自由にしてくれよ」 「――――じゃなかった」 「……え?」 「アンタなんて産むんじゃなかったよ!」 「……なんだよそれ」 「そのまんまの意味だよ!」 産むんじゃなかったという言葉が何度も俺の頭の中に響いていた。 そんな言葉を聞いても、俺がずっと支えにしてきたあの時の言葉だけは捨てきれずに信用していた。 だから俺は今まで信じてきた言葉を壊さない為に、安心する為に、聞いてみたくなったんだ。
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