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ストローで液体を掻き混ぜ、カランカランとグラスと氷が接触する音を鳴らす女。
「初デートね」
妖艶な笑みを浮かべながらそう語りかけているのは九条彩芽。
「別にデートでは無いだろ?」
翔はお前には興味が無いと言わんばかりの無表情で答えた。
「あら、冷たいわね。そんな態度するんだったら昔の事、話してあげないわよ」
佐伯が翔に電話してきた日から3日。彩芽から昔話をしてあげるからデートに付き合ってとメールが来たので、翔は話を聞く為に、近所のファーストフード店に来ていた。
【面倒な女だ。とりあえず機嫌を損ねないようにして、話を聞き出したい】
「……悪かった。昔の話を聞かせてくれないか?」
「昔話する前にデートに付き合ってよ」
「話を聞いてからじゃないと、モヤモヤしてデートを楽しめないだろ?話してくれたらデートするからさ。だから先に話してくれないか?」
んーっと少し考えるようなそぶりを見せる彩芽。
「そうね……わかったわ。話したらちゃんとデートに付き合ってよ?約束よ?」
「ああ」
彩芽はグラスを緑色に染めているメロンソーダを飲み干してから話し始めた。
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