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「ちょっとトイレに行って来るねぇ~」
そう言って美菜は立ち上がり、ドレスの裾を気にしながら、覚束ない足取りでトイレに向かう。
【ずいぶん酔ったな。もう22時半か。美菜が戻ってきたら帰ろう】
翔は美菜が席に戻ってきたら店を出ようと考えていたのだが、10分経っても美菜は戻らず、わずかに苛立ちを覚えた。
足を小刻みに揺らしながらトイレの方向に目をやり待ち続ける。
【まだか?いくらなんでも長いだろ。美菜も相当酔ってる感じだったし、トイレの中で寝てるんじゃないか……?】
そんな事を考えてからわずか数秒でトイレから美菜が出てきた。
表情は少し怒っているような感じで、急ぎ足で翔のいる席に戻ってきた。
「メイク直しに時間掛かってたのー!私もプロだから、いくら酔っててもトイレで寝るとかしないもん!」
「え……?何で俺が思ったことがわかったんだ?」
「なんでって、普通にトイレの前で言ってたんでしょー。ちゃんと聞いてたから」
何の冗談?とでも言いたそうな笑いを浮かべながら美菜は答える。
美菜が笑っている一方で翔は混乱していた。
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