自覚

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【意味がわからない。仮に酔っていてさっき考えた事を声に出していたとしても、トイレまでの距離は結構あるし、BGMや他のテーブルの会話で店内は結構うるさいから大声で叫ばないとトイレの中にいた美菜には聞こえないはず……】 【だったら何だ?】 【美菜の空耳か?空耳が偶然俺の考えた事と一緒だったのか?】 【てかタイミング的にありえない。俺が考えてからすぐに美菜はトイレから出てきたし】 【タイミングって言えば……】 【そう、そうだよ。昨日の自転車泥棒の時だよ。俺が心の中で叫んだ瞬間に犯人が悲鳴をあげたんだ!】 【あの時は電柱に激突した瞬間の悲鳴だと思ったけど、よく思い出したら違う!悲鳴をあげた後に電柱にぶつかったんだ!】 【いったい何なんだ……!?】 「――ょう」 「翔ってば!!」 美菜が大きな声で呼びかけながら心配そうな表情で翔の顔を覗き込む。 その呼びかけでようやく翔は頭の世界から帰ることができた。 「……何?」 「なに?じゃないよー。急に顔色悪くなって黙り込んじゃうんだもん。何回呼びかけても返事ないし、目を開けながら気を失ってるのかと思ったよ!」 「ああ、ごめん。ちょっと考え事をしてただけ」 【そうだ。タイミング……。美菜に俺の声?がいつ聞こえたのか聞いてみよう】 「なぁ、さっき俺が寝てるんじゃないかって言ったのって美菜がトイレから出る直前だった?」 「うん?そうだよ。覚えてないのー?相当酔ってるねぇ」 【やっぱりそうか。これは偶然じゃない】 【じゃあ何だ?俺の心の声がまわりに聞こえてるって言うのか?今も……?】 翔は不安になり美菜の表情を見てみるが、心の声が聞こえている様子では無かった。 【良かった。今は聞こえてないみたいだな……。やっぱり単なる思い過ごしなのか?】 【もしくは、強く念じたりすればいいのか?試してみるか】 翔は強く念じながら心の中で美菜に呼びかけてみた。
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