疑わしき者

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そのあと美菜が仕事があると言うので、出勤するまでの時間2人は他人から見ればどうでもいいような話題で笑い合う。 そして翔にとって心が躍るような楽しい時間はあっという間に過ぎていった。 「そろそろ仕事に行かなきゃ」 「うん。電話付き合ってくれてありがとね。仕事頑張って!」 「私も楽しかったよ!ありがと!行ってきますっ!」 翔は寂しい気持ちを隠して明るく振る舞って電話を切った。 当初の眠気は何処か遠くへ飛んでいき、それどころかいつも以上に元気になっていた翔は、普段では考えもしない行動を取る。 【あー腹減ったな。……そうだ。どうせ暇だし、たまには自炊でもするか!そうと決まればさっそく材料の買い出しに行こう!】 思い立つとすぐに立ち上がり、慌ただしく部屋を飛び出した。 外に出ると寸前の決意が一瞬揺らぎそうになるほどの冷たい風が翔の頬を撫でる。 【寒っ……!まだ11月に入ったばかりなのにこんなに寒いのは反則だよ反則……】 などと思いながらも、食材を求めてスーパーを目指す足取りを止めることはなかった。 しかし、この普段とは違う行動が思わぬ事態を呼び寄せることになる。
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