異変

2/24
8008人が本棚に入れています
本棚に追加
/652ページ
寒空の中、早足で自宅近くのスーパーに向かう翔。 スーパーは駅とは反対方向にある為、普段通ることは殆ど無い道だ。故に次々と見慣れない風景が翔の目に飛び込んでくる。 【へぇ、こんなところに床屋があったのか。近所なのに全然知らなかったな】 知らない道を通ると何かしらの新しい発見があるものだ。しかし、いつもの翔ならそれを発見だとも思わずに見過ごしていただろう。 そんな風に感じるのは、美菜との楽しい会話が翔の気分をピークにまで押し上げたのが大きな要因である。 【そういえばスーパーなんて今のアパートに住み始めた当初ぐらいしか使ってなかったもんな。はは、最初は節約の為に張り切って自炊とかしてたっけ】 過去を振り返りながら薄ら笑いを浮かべる。今の翔にとっては些細なことでも楽しい気持ちになれるのだ。 鼻唄でも歌い出しそうな勢いの翔。 だが次の瞬間―― 何かを感じたという意識は無い。ただ何気なく後ろを振り返っただけ。 しかし確かに見た。 物陰に隠れる人影を。 【誰だ?今確かにあの自販機の裏に誰か隠れたよな……?】
/652ページ

最初のコメントを投稿しよう!