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寒空の中、早足で自宅近くのスーパーに向かう翔。
スーパーは駅とは反対方向にある為、普段通ることは殆ど無い道だ。故に次々と見慣れない風景が翔の目に飛び込んでくる。
【へぇ、こんなところに床屋があったのか。近所なのに全然知らなかったな】
知らない道を通ると何かしらの新しい発見があるものだ。しかし、いつもの翔ならそれを発見だとも思わずに見過ごしていただろう。
そんな風に感じるのは、美菜との楽しい会話が翔の気分をピークにまで押し上げたのが大きな要因である。
【そういえばスーパーなんて今のアパートに住み始めた当初ぐらいしか使ってなかったもんな。はは、最初は節約の為に張り切って自炊とかしてたっけ】
過去を振り返りながら薄ら笑いを浮かべる。今の翔にとっては些細なことでも楽しい気持ちになれるのだ。
鼻唄でも歌い出しそうな勢いの翔。
だが次の瞬間――
何かを感じたという意識は無い。ただ何気なく後ろを振り返っただけ。
しかし確かに見た。
物陰に隠れる人影を。
【誰だ?今確かにあの自販機の裏に誰か隠れたよな……?】
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