処刑

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「――それでお前はどうするつもりなんだ?」 しはじの沈黙のあと翔が尋ねた。 「……自首するつもりです。神様にもそう言われました。それで今日、最後の挨拶に来たんです」 「そうか……」 「このあと警察に行こうと思うんスけど……逃げ出してしまいそうっス……。いざ自首する時間が近付くと怖くて……」 今にも泣き出しそうな彼の顔を見て翔は声を掛ける。 「俺が付き添おうか?」 西城が翔の自宅にやって来てから早1時間余り。ようやく目的の言葉まで辿り着けた翔。 「……そうしてもらえれば心強いんっスけど……最後まで兄貴に迷惑を掛けてしまうのは――」 「こんな時にまで気を遣うな。お前にとって俺は兄貴なんだろ?最後まで弟分の面倒を見るのが兄貴ってもんだ」 「兄貴…………」 西城の頬に一粒の涙が伝う。 それを機に西城は堰(せき)を切ったように泣き崩れた。 ずっと堪えていたのだろう。 嗚咽しながら泣きじゃくる彼の姿に、さすがの翔も多少の哀れみを感じた。 【コイツはそこまで嫌いじゃない。何だかんだ良くしてもらったからな。この役目を与えたのは少し可哀相だったか……】 ほんの僅かではある。翔が見せた人間らしい感情。 しかしそんな感情が見られたのはこれが最後だったのかもしれない――。 このあと翔は警察署の前まで西城の自首に付き添った。 無事に見届けた彼は安堵の溜息を吐く。 全ての障害を排除することが出来た上、神信会の罪を全て西城に被せることに成功した翔。 ――そうして全ての枷を外されたこの日から、彼は大胆かつ壮大な計画を練りはじめる。 それが日本全土を震撼させ、歴史に残る事件になることをまだ誰も知らない。
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