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――2012年12月12日。都内某所。とある駅前広場にて。
「――など、我々自主党はあらゆる手段を講じて必ずや景気を回復させます!その他にも社会保障制度改革、年金問題、雇用問題、多岐に渡って――」
選挙カーの上で高らかに演説する政治家。それを生真面目に静聴する群集達で辺りは埋めつくされている。
「――そのためにまずは政権奪還です!」
私利私欲をひた隠して詭弁を並べ連ねる政治家の顔はどれも卑しく感じられる。
対して群集は冷ややかな視線を送りつつも、どこか淡い期待を抱き、その詭弁に耳を傾けている。自分は何もしたくない。誰かがやってくれるだろう。そんな他人任せな人間達ばかり。
「――皆さんの1票を私に預けてください!必ずや期待に――」
《黙れ愚かな人間共よ》
それは前触れもなく突然。
人々の頭の中に響いた神々しい男の声。
演説していた政治家も静聴していた群集も思考回路が停止する。そして辺りに沈黙が広がった。
《――所詮人間は私欲の塊。それ故人間が統べる国家では、全ての民が幸福を掴むことは出来ない》
《幸せになりたいか人間共。なら神である我(われ)だけを信じよ》
《それとも不幸のままでいたいか。では愚かな政治家にでも縋っていろ》
《決めるのは我では無く貴様ら人間だ》
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