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問題も無く楽観的に見える翔。
しかし懸念材料が無い訳ではない。その懸念とは、唯一翔が思念を使えることを知っている人物にある。
――翔にとって最愛の人、時任美菜。
彼女は翔が思念を使えることに加えて、自由自在に声色を変えられることを知っている。今回の騒動が翔の思念によるものだと感づいてもおかしくないのだ。もちろん翔は徹底的にしらを切るつもりではあったが。
――12月16日。
そんな翔の不安が一挙に解消される。
『――あ、今日の夜空いてる?私のマンションに来て欲しいんだけど、どうかな?』
正午を過ぎた頃に美菜から電話がかかってきた。
「今日?良いけどどうして?」
【あれ?誕生日なら明日だけど……】
『だって明日誕生日でしょ?日が変わった瞬間、1番におめでとうって言いたいもん!』
その言葉に翔は顔を綻ばせた。
「はは、そういうことか」
“神の意志”を疑われてしまうのではないかという翔の懸念はどうやら不発に終わったようだった。
『準備――じゃなくて……えっと、用事があるからちょっと遅い時間だけど、夜11時とかでもいい?』
「うん、大丈夫だよ」
【準備って……もしかしてサプライズの準備か?はは、美菜はわかりやすいなぁ】
そうして通話を終えると、翔は胸を高鳴らせながら夜になるのを待った。
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