賭けトランプ

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「それにどうですか?聞こえるでしょう?何台ものパトカーのサイレンの音が!」 熊野の脳にはしっかりと徐々に近付いてくるパトカーのサイレンの音が響き渡っていた。それは後ろにいた従業員も例外では無く、慌てふためいている。カジノが行われている隣の部屋も騒がしくなっていた。 【さてここからだ。ピンチになった人間は何をするかわからない。もし熊野が拳銃でも持っていたら危ないからな。それにこれはハッタリだ。時間が経てば嘘だとバレる。まずは落ち着かせて上手く交渉だ】 翔は交渉内容を用意している訳ではない。その場のアドリブで乗り切ろうと考えている。 「で、熊野さん。ここからは交渉です」 「……交渉だと!?どういう事だよ?」 「実は俺の父親は警視庁の官僚なんです。熊野さんの態度次第で、この件を揉み消す事もできます」 【それらしい理由を考えないとな……】 「潜入捜査と言っても熊野さんを逮捕するためって訳じゃないんですよ。熊野さんが先程言っていたハッカー。我々が逮捕したいのはその人物です。その人物は我々が追っている重大な事件に関わりがありましてね。その人物の情報を得る為に、繋がりのある熊野さんに接触したんです」 翔は熊野の様子に細心の注意を払いながら話を続ける。 「もし熊野さんが、そのハッカーについて知っている情報を提供してくれれば、警察はこのカジノを含めた全ての案件については目を瞑ります。どうでしょう?熊野さん」
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