賭けトランプ

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翔がアドリブで話した内容はほぼ完璧。熊野は翔の問い掛けには反応せず、黙って地面を見つめている。そして沈黙が10秒ほど続いた後、熊野が口を開く。 「……佐伯 雄大」 「サエキユウダイ?」 「そのハッカーの名前だ。俺はそれ以上の事は知らねぇ。それが本名かどうかもわからねぇ。5年の付き合いとは言ったが、実際に会った事がある訳じゃねぇ。連絡はメールのみだったからな」 「なるほど。連絡はメールのみですか。ではそのメールアドレスを教えて頂けますか?」 熊野はメモ用紙に佐伯雄大と名乗るハッカーのメールアドレスを書き殴り、翔に手渡した。 「ありがとうございます。これで我々警察は熊野さんから手を引きます」 「たったこれっぽっちの情報で、本当に警察は俺から手を引くのか?」 【少し疑われている……。ここは強気にいないとな】 「おや?手を引いて欲しくないんですか?」 「い、いや……、そういう訳じゃねぇが」 「今後、熊野さんには今まで通り佐伯雄大と接触をしてもらいます。そして何か新たな情報を掴んだら俺の携帯にメールしてください。警察が流した俺の嘘情報の中に携帯アドレスもあったはずですよね。そのアドレスは本物ですので。それさえ承諾して頂ければ、警察は熊野さんから手を引きます」
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