賭けトランプ

35/36
8008人が本棚に入れています
本棚に追加
/652ページ
「わ、わかった」 「それでは、俺はもう帰ります。下で待機している捜査官には帰るように指示しますので安心してください」 没収されていた荷物を返してもらい、翔はハラハラしながら熊野がいる部屋から出る。そしてカジノが行われている部屋を背中で視線を感じながら通過して玄関の扉までたどり着いた。 そして扉を開ける。 外の景色が翔の目に飛び込んでくる。まだ明るく、翔がここに来た頃と何ら変わりない景色。マンションの一室にいたのはほんの1時間程度。だが緊張の連続だった翔にとってはまるで何日もこのマンションの一室にいたかのような感覚だった。 「助かった……」 翔はつい口走る。 それは近くに人がいても気付かない程の小さな声。緊張や不安や恐怖からの解放。心の底から安堵した声だった。 ――そうして翔は、どこかに寄る気力などあるはずも無く、直行で自宅へと帰っていった。
/652ページ

最初のコメントを投稿しよう!