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――翌朝。
翔は待ち合わせ時間より3時間も早く駅周辺に来ていた。
計画を実行するのにベストな場所を探す為だ。前日にある程度、計画場所の目星は付けていたものの現地でしっかり下見をしないと気が済まなかったのだ。
そして下見を終えた翔は駅前の百貨店に向かう。目的は計画に必要な双眼鏡を買う為。
悩んだ末、手に取ったのは10倍の双眼鏡。性能を簡単に説明すると100メートル先の物体が10メートルの位置から見ている大きさに見える。
【よし。これで近くにいなくても大体の様子を把握できる。そろそろ約束の正午だ。相手の顔や名前は美菜から貰ったメールで確認したし、準備はOKだ】
待ち合わせの場所から少し離れた位置でターゲットを探す。
正午から5分過ぎた頃、その人物は姿を現した。
眼鏡をかけていて髪の毛は薄い。くたびれたグレーのスーツを着ていて、歴戦のサラリーマンを彷彿させる容姿。
【あの男だな。始めるか】
翔は男の姿を見ながら、神々しく、それでもって優しい声をイメージした。
この状況で思念を送っているのが自分だと、まずバレる事は無いのだが、翔は無意識の内に自分が男だという事を隠そうとして、女神のような声をイメージした。
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