操り人形

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「ああ……なんという事だ」 愛澤が何かを言い始めた事に翔は気付いたが、先程の叫びとは打って変わって、小さな声だったので聞き取れない。 翔は通行人を装って愛澤に近付く。 挙動が不自然にならないように気をつけながら、愛澤のすぐ近くにあるベンチに座って耳を澄ます。 「そうか……。そうかそうか。真面目に生きてきた事が報われたのか。おお……女神様。私は何をすれば幸せになれるのですか?」 【こいつ、もう信じたのか?これは嬉しい誤算だな。まさかこんなに早く神の声を信じるとは……】 【盲信タイプの人間なのか?この様子だと次の計画に移る必要も無さそうだ】 翔が次に計画していたのは、周りに人がいない場所に愛澤を移動させる事。 そうして翔は遠くから双眼鏡で愛澤の状態を確認しながら思念を送り、人為的に声を聞かせるのは不可能な状況で「神の声」を聞かせて信じ込ませようというもの。 だが、人通りの激しい駅前での出来事にも関わらず、愛澤はすぐに「神の声」を信じ込んだ。 【まずはこいつを思い通りに操れるか試す】
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