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本音と建前。
よく耳にする言葉だ。
しかし、それを上手く使いこなしているのは一体どのくらいの人だろうか?
多分そんなに多くはないと思う。
だってこんなに大変で、面倒臭くて、自分の想いも告げられないんだから。
私は一度、人が信用出来なくなった。
思春期によくある、変な被害妄想を過大させてしまうというのだ。
まあ、皆が皆、共感と賛同出来るかは別にして。
それでも、私は一度、他人に対して疑心暗鬼になった。
そんな時、彼女が現れた。あの時彼女は――
「おはよー千弦! 今日も可愛いね!」
「おはよう。それ、普通男子の台詞じゃない? 美希」
「そうかなー? 女の子でも可愛い人は可愛いんだよ」
「ま、まあ、確かに、一概には否定出来ないわね」
「でしょ? それでさ、千弦の可愛いと思う人って誰?」
「可愛い人? そうね……美希かしら」
「私? ホントに? お世辞じゃなくて?」
「なんでそんな妙に疑り深いのよ。本当よ本当。嘘でもなければお世辞でもないわ」
「そうなの? 学年のアイドルに言われると自信になるなー。……よし、明日自慢しよ」
「なんでよ。それ、端から見たら嫌味な女よ? さすがに内輪でした会話の内容を外で触れ回るのはちょっと……」
「そう? みんな羨ましがると思うけどなー」
「女子が女子を可愛いって褒めたって言ったら、変な噂が広まるから辞めて。……ただでさえ、好かれてないと思われてるんだから……」
私は友達との会話の途中でふと、視線を横に向ける。
そこには、友人と仲良く話す彼の姿があった。
……なによ。アタシと話す時、あんな顔見せたことないじゃない。
「…………っ!」
思わず彼と視線がぶつかり、驚きと照れと恥ずかしさから顔を即座に逸らす。
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