12人が本棚に入れています
本棚に追加
「どしたの？」
「な、何でもない」
「ふーん……」
すると目の前の友人は、アタシが視線を向けた方に顔を向ける。
「なに？ 気になる男子でも居たの？」
「ち、違うわよ！ ただ何となくボーッとしてただけ。そんなんじゃないわ！」
「ボーッとしてただけ、ねぇー」
「なに？ そのやらしい笑みは」
「北条勇斗君」
「!?」
いきなり言い当てられ、ドキッとする。
「いやー彼ね、なんだか最近女子の間で人気が出てきてるらしいのよ。千弦はどう思う？」
「北条君？ そうねえ、私は別に何とも……」
「そう？ 今までマニアックな友人とか事件とかでみんなから敬遠されてたじゃない？
けど、虫に怖がってた女子の為に虫を追い払って優しい言葉をかけたり、困ってた女子を何も言わずに手伝ったりとかして、噂とは違うってみんな考えを改め始めたのよ」
美希はアタシの変化に気づいてないようだった。
「へ、へぇー。それは知らなかったわ」
アイツ、また知らない女を口説いてたの？
ホント、おじさん達はなんて教育をしてくれたのよ。っていうか、なんで対象が女性全員なのよ!?
……まあ、アタシも入ってるから良いけど。
「知らなかった？ そうかあ。
……あのさあ、千弦ってやっぱり女の子が好きなの？」
「なんでそういう結論になるわけ!? 美希アンタ、話聞いてた？ アタシはただ単に、北条君が人気出てきたのを知らなかっただけよ？ それとこれとは関係ないでしょ？」
「いや、今までにされた告白を全て断り、かといって男絡みの浮わついた話も聞かないし。そりゃ、女好きか？って疑いたくはなるよ」
「そういうものかしらねぇ……」
「そういうもんなの。男子だって、女絡みの話が無かったら男色か？って疑われちゃうらしいわよ」
「へぇー」
そう言えば、アイツって女絡みの色恋沙汰な話、あんまり聞かないわね。……もしかして――!?
「いや、それはないわ。ないはずよ。……だってアイツは昔に……」
「あらら。今度はぶつぶつと独り言を。千弦も忙しいんだね」
「美希も彼氏が出来たとか、そういう話聞かないわね？」
「あれ？ もう復活したの？ 早くない？」
「そんなことより、美希。アンタも全然色恋沙汰な話聞かないわよね？」
最初のコメントを投稿しよう！