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☆
「あら、沙祐美ちゃんは?」
「寝かせたよ。それにしても朱音お前またオレの漫画を……」
「そうそう。これ超ウケるわね……」
「ちょっと待て朱音、なんでお前はそんなド真剣な顔で軽口を叩けるんだ?」
「………さぁね。私がNTだからじゃないかしら?」
「お前はさっさと精神崩壊して毒電波を受信しちまえばいいんだ!!」
あれ……?このやり取りどこかで……。
「そんな事より遅かったわね。沙祐美ちゃんなかなか布団に入ってくれなかったの?」
漫画を閉じてギシッとオレの椅子を鳴らした。
「いや、すぐに布団には入ってくれたよ。ただ」
「ただ?」
「……ん、まぁ少し話をな」
「ふぅん……」
朱音は眉をひそめた。いやはや、これはこれは。
「話は変わるが朱音」
「何?」
「ちょっと質問いいか?」
話の切り替えが急すぎたのか、朱音が少し驚いた表情をしていた。まぁ我ながらなかなか強引に話を曲げようとしているからな。
「まぁ、まぁいいわよ。何?」
身を乗り出して朱音が聞いてくる。
「朱音、お前さ……よくギャルゲーとかラノベとかに出てくる鈍感な主人公どう思う?」
「………は?」
キョトンと呆気に取られているようだ。
しかし、オレの表情を見てすぐ真剣な表情になり黙考してしまった。
「………ん、私は鈍感であることはマイナスに考えるわね」
しばらく間を空けて朱音がそう言った。
「なんでだ?」
「うん。私の方から見て、女の子視点からだと主人公は明らかに逃げてるって感じがするからよ」
「逃げてる?」
「えぇ。主人公は鈍感と言えども人間的な感情は持ってる。例えばテンプレで言えば誰にでも優しいみたいな」
「あぁ」
「だから心のどこかではそのヒロインの気持ちには気付いているはずなのよ。だけど気付かない。鈍感だから?違うわ。ただ単にヒロインの気持ちに気付いて環境が変わるのが怖いからよ。だから、鈍感っていうのはあんまり私は良いと思わないわね」
語り終えて朱音は一息ついた。
「なるほど。やけに饒舌だからびっくりしたよ」
「でしょ?経験者は語るってやつよ」
とオレに向け、飛びっきりの笑顔でウインクした朱音だった。
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