神楽月は別れの季節?

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神も楽しい神楽月。もう今年も残すこと1ヶ月とほんの少し。 つい昨日までお日さまの暖かさにうたた寝していた女将、小菊も水の冷たさに目を覚まします。 今日はとびきり美味しそうなかぼちゃを使ったお料理がいいかしら?思いきって小豆を使ったお料理がいいかな? 仕入れてきた野菜やお肉、お魚、お豆腐を目の前に悩んでしまうのは何時ものことですが、今日はいつももより気合いが入ってしまいます。 それというのも先日、アンティークを贔屓にしてくださるメガネ君が彼女さんとご一緒に此方に食事をしに来たいとおっしゃったからです。 メガネ君、というのはこの近くにある、小さいけれどいい本をたくさん出版されている会社の社員さんです。メガネ君は読むことも書くこともプロデュースすることもお好きなようで、お酒をご一緒させていただくと会話の折々に仕事への誇りを感じ、素敵な方だなぁと思ってしまいます。 さて、そんなメガネ君の彼女さんは誰もが知っているような大企業の社員さんです。メガネ君がいうには才色兼備な上優しくて理解力がある人だそうで、お料理しか取り柄のない私には羨ましいかぎりです。そんなメガネ君と彼女さんですがあることから二人は仲違いをされたようで、今日のお食事を最後にお別れをするそうです。 その仲違いというのも、先日彼女さんがメガネ君に結婚したいとおっしゃったことが原因のようで、メガネ君は自分が今まで誇りを持って働いてきたけれど彼女さんを養っていけそうにないというような旨をそっと私に教えて下さいました。 私がメガネ君にそっと、彼女さんにもお仕事を続けていただいたら?というとメガネ君は自嘲するように俺が我慢できないんだ。情けないだろ?今まで仕事がどうだの誇りがどうの言ってきたけど結局彼女一人幸せに出来ないんだ、そう言うと強めのお酒を煽っていらっしゃるのを見て、あぁ女将失格だわと私もすっかり悄気てしまいました。 それでも、それでもこんな鈍感がいうのもなんですが彼女さんとメガネ君の仲違いは誰かが中に入ればたちまち解決するのではないかと思ってしまうのです。 この間の失敗を生かして今日のお二人のお食事で仲直りの切っ掛けになればと一生懸命考えて作るうちにお二人が店にいらっしゃいました。
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