1・ポニーテールの刃

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眼前の女生徒はオレの指摘がショックだったのか、少し、沈んでいるようにも見えて。 「悪かった。オレの言うことなんか気にするな。 藁科は良い子だから、そんな言葉のひとつでマイナスになんかならないぞー。……ちなみに、キャバクラの件は秘密な? これでも先生なもので」 フォローと口止めを約束しながら、腹の中では反 省の塊が重くのしかかる。やる気を削ぐことはしたくないと、さっき誓ったのにもうこのざ ま……。 「じゃあ、ふたりだけの秘密、ですよ?」 「了解」 気にしていたのはオレだけで、藁科の機嫌はもうとっくに直っていた。 少女の心はよく分からん。 何故だか嬉しそうにほくそ笑む藁科は、自分のノ ルマである看板の名前を書き始めた。するすると 筆を走らせる所作は姿勢が良く、書道の段を取得しているようにも見える。 オレも作業に専念する。 おれたちふたりの書のうちどちらかが、来月の文 化祭、クラス運営の和風カフェの看板になるんだそうだ。
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