1・ポニーテールの刃

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―――― ―― 「終わったか?」 「はいっ!」 「……」 藁科が披露してくれた書は、個性溢れる豊かな作品だった。 なるほど。ここまでのはなかなか。皆の言うとおり、味がある。 「やっぱり……笑ってますね? 当然ですーっ。先生方で一番達筆な人と、ド下手な私とじゃ雲泥の差。……片山先生、名前は『厳道』だし、怪しい書道家みたいです」 ……名前だけ立派でオレだって嫌だよ。 「乾かすから、明日の朝までここに置いておけ」 「はーい」 むくれた藁科と一緒に準備室を出る。 あっ。そういえばさっき、藁科はオレのこと『先生』って言ったよな――思い出し、飲み込みの早さに感心をした。 オレにはもうない、いや、あったかどうかも怪しい高度の吸収率。藁科は、もし、どす黒い影が傍にあったとしたら、その全てさえも効率良く吸い込んでいってしまうのだろうか。なんてことが、ふと頭をよぎった。 真っ直ぐな生徒を見ていると、どうかナニモノにも負けないようにいてくれと願う。そう思えた時、僅かだが教師の要素が自分にもあるのだと、安心する。
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