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「肝心なデータ処理の方が苦手なボクはどうすればいーのさ」
「ガンバ!」
「ちーちゃぁん!ゆーくんが意地悪だっ」
わぁん、と泣き崩れる真似をしながらすがってくるこの人は、本当にいくつなんだろう。
昔からこの人のことは見てきたつもりだが、見てくれに関してはもう何年も記憶に変化がないような気がする。
ここ数年で彼の変わったところと言えば、髪の色くらいのもの。
外側に変わりが見られない最中、内側にも変わりが見られないとなるともうこの人の年齢がいくつだったのかすら危うい。
「どうせ普段遊んでるんですからこのくらい真面目にやったらどうですか?暇くらい腐るほどあるでしょう?」
「うっわ酷い。ボクだって一応仕事持って帰ってるのに」
「だったらこれも仕事です。大人しく持って帰ってください」
「わぉおこれってなんて言うの?墓穴?」
薄く笑いながら資料に目を落とす先生。
淡い琥珀色をした瞳は結構気に入っている。
ガラス越しにうっすら光っているそれを見つめていたら、顔をあげた先生と視線がぶつかった。
「ん?なぁに?」
「……いえ、なんでもないです」
ぬるま湯は心地よくて眠たくなる。
まるで時間が止まってしまったかのようで、うつろいの中へ溶け込んでしまいそう。
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