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なにも考えず、目先の快楽だけ追っていればいい、みたいなそんな甘ったるい環境。
この人は人を甘やかすのがバカみたいにうまい。
ついでに、僕を壊していくのは、もっと上手。
うっかり甘やかされてしまいそうになる。
そして、気を抜けば簡単に転がされてしまう。
言葉巧みに甘い毒に侵されて、簡単にレールに乗ってしまう。
何が幸せとか、そういう理屈じゃない。
たぶん、この人は優しい人だから。
僕が傷付かないように、折れないようにと優しく護る。
「じゃ、ちゃんと渡したからな。俺は他にも用があるから、そろそろ帰るわ」
「理事長によろしくねー」
「自分で言ってくれ」
岡安君が部屋を出て一気に沈黙がやってきた。
元々彼がよく喋る子で賑やかなのも理由かもしれない。
反して僕はあまり騒がしいタイプではないし、久保田先生も自ら率先して騒ぐタイプでもない。
当然、というか必然的に沈黙の間が多くなる。
しかし、僕自身沈黙を嫌うわけではないし、先生もそれは分かっているらしく沈黙を埋めようと無理な会話を振ってくることも無い。
会話が途絶えたからといって気まずくなることもないし、むしろこの沈黙にはもう慣れてしまった。
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