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呼び出された理由は十中八九、この人の思い付き。
暇ができては、呼びつけてみる。
そんな生ぬるい関係。
以前一度、関係を持ったことはあるが、それまでだ。
今となってはどうしてそんなことになったんだか、理由の説明がつかないくらい曖昧でおぼろげな感情。
好きとか、そういう、きれいな感情じゃなかったのは確か。
淋しいから傍にいる、とか。
何かを埋め合わせるためだとか。
きっと、お互い欠けたところを埋めようと思っていたんだと、今ならわかる。
傷を埋めるみたいに、上から新しい何かを植え付ける。
そんなことで埋まるような簡単なものじゃないと、分かってるはずなのに、そうできないのは僕が愚かだからなのか、この人が優しすぎるからなのか。
「くーぼーちゃん」
「あ、いらっしゃーい」
聞き慣れた声がした後、カラカラと軽い音を立てて引き戸が開いた。
そこには見慣れた顔が……というかその前に先生、ひとついいですか?
ここ、保健室ですよね……。
なんでこうも、健康な人間のたむろう場所になってるんですか。
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