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「あ、そうだ。外泊届、代わりに出しといて」
「またですか」
「うん、またなんです」
「わかりました。夜遊びもそこそこに帰ってきてくださいよ」
「気が向いたらね」
いつになったらその気とやらが向いてくれるんだろうか。
夜遊びもほどほどにしてほしいものだと、常々言っているのに。
どの道上からものを言ったところで、素直に鵜呑みするような人でもないので、言うだけ無駄というものか。
彼のそういう筋の通っているようで通っていないところが、彼らしいともいえるのだが……この場合、それはただの優柔不断という意味になりそうだ。
「で、岡安君は何しに来たんですか?」
「……ああ、そっか。俺久保ちゃんに用あって来たんだった。すっかり忘れてた」
「んー?ボク?」
理事長からの頼まれごととやらを渡しながら、用件を伝えると込み入った話をしはじめた。
自分には関係ないことなのでそれを眺めながら改めて思った。
「(なんでこの人たちって仲がいいんだろう)」
岡安君は軟派ではあるが、人嫌いが激しいところがある。
基本的には人当たりのいい好青年であるが、腹の内では仄暗いことを考えていたりする。
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