16人が本棚に入れています
本棚に追加
母親は有名なジュエリーデザイナーだった。
誰からも頼られ、その仕事の完璧さから周りの評価が高い。
一方父親はサラリーマンで、ぱっとしない印象。
結婚当時は格差結婚だと騒がれるほどだったらしい。
それでも母は父を愛したし、父も気後れしながらも母を愛していた。
同時に二人の間に生まれた命も。
僕の周りには幸せが溢れていた。
そう、一か月前に父親が未成年達によるおやじ狩りに会い、死んでしまうまでは。
僕はそのことを学校で囁かれ、嫌がらせをされ、教師もそれを黙認していた。
そのどちらもが大きな理由になり、僕は一週間前に学校の屋上から飛び降りたらしい。
だからかもしれない。
きっと僕は思い出したくないんだ。
父の優しさも、友達の裏切りも。
復讐。
先程ヴィンはそう言った。
それもいいかもしれない。
父親を、僕の人生を少しでも狂わせた奴らに”自由に人生を謳歌”させるひつようはないよね。
「情報、集めてきてくれてありがとう」
僕はヴィンにお礼を言って頭を下げた。
学校は来週から行くことにしよう。
動けるのは今しかない。
僕はヴィンの緑の目をじっと見て言う。
「復讐したい」
僕を不幸にした全ての人間に罰を。
彼らに自由は似合わない。
そしてすべてが終わったら、僕は再び落ちるだろう。
暗い、暗い川に浮かぶ椿の上へと。
最初のコメントを投稿しよう!