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『ただいま。』
その声に答える声はもちろんない。
僕、朝日恵(あさひめぐみ)の家は母子家庭だ。
小学2年生だった僕と母さんを残して僕の父さんは逝った。
仕事帰りの車道、三歳の女の子をトラックから救って死んだらしい。
当時は相当ショックだったが中学2年になった今、もう6年も前の事だ。
とっくに立ち直ってる。
家の2階にある一番奥の自分の部屋に入り、大して何も入っていない鞄をベッドに放り投げ早足で台所へ向かう。
『腹減ったー。今日は何だろうなー。』
僕の母親は朝から晩まで働いているため、夕食はいつも僕が学校に行った後、作りおきしてある。
学生としての1日を終え帰宅した年頃の腹を空かせた男子としてはこのメニューが毎日の楽しみでもある。
台所の暖簾をくぐると食卓テーブルの上に1枚の紙を見つけた。
《恵へ。夕飯の材料買い忘れちゃってたから、今日は何かお弁当でも買って食べてください。》
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