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メイセイ
明星工業高等学校。
生徒のほとんどは、男ばかりの学校に、6月という中途半端な時期に、転入生がやってきた。
それも、女子生徒だ。(ちなみに、2年生に女子はいない)
男子は、途端色めき立った。
癖のない黒髪は華奢な肩を隠し、つぶらな瞳を守る睫毛は長い。
ふっくらとした頬や唇は、紅をさしていないのに紅くつやつやとしている。
同年代の女子と比べたら小柄だが、たとえ多勢に埋もれてたとしても、その魅力的な存在感は無視できないだろう。
愛らしい容貌は、しかし緊張のためか、少々不機嫌そうに見える。
だが、男子から漏れるのは感嘆の吐息ばかりだった。
「田村綾-タムラアヤ-だ。貴重な女子だからって、寄って高ってイジメるんじゃないぞ?」
担任(30代♂)の言葉を、果たして聞いている者がいるだろうか。
一人だけ--眼鏡越しに見つめる胡散げな双眸に、アヤ本人も、そして彼女に夢中なクラスメイトも気づく由もない。
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