~ 1話 ~

2/21
前へ
/28ページ
次へ
メイセイ 明星工業高等学校。 生徒のほとんどは、男ばかりの学校に、6月という中途半端な時期に、転入生がやってきた。 それも、女子生徒だ。(ちなみに、2年生に女子はいない) 男子は、途端色めき立った。 癖のない黒髪は華奢な肩を隠し、つぶらな瞳を守る睫毛は長い。 ふっくらとした頬や唇は、紅をさしていないのに紅くつやつやとしている。 同年代の女子と比べたら小柄だが、たとえ多勢に埋もれてたとしても、その魅力的な存在感は無視できないだろう。 愛らしい容貌は、しかし緊張のためか、少々不機嫌そうに見える。 だが、男子から漏れるのは感嘆の吐息ばかりだった。 「田村綾-タムラアヤ-だ。貴重な女子だからって、寄って高ってイジメるんじゃないぞ?」 担任(30代♂)の言葉を、果たして聞いている者がいるだろうか。 一人だけ--眼鏡越しに見つめる胡散げな双眸に、アヤ本人も、そして彼女に夢中なクラスメイトも気づく由もない。
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加