遭遇-或いは、運命-

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  正直、永遠、なんて言われてもピンとこない。 私は世界――ましてや自分の存在が永遠なんて感じた事は一度もないし、永遠に存在しているなら今頃あちこちで混乱が起きているだろう。というか、永遠の何かを賄うには、地球は小さい気がする。 祖母のいうネバーランドを信じない訳じゃないけど…それが想像出来るか、は、また別問題。 ぶっちゃけ、永遠の命、なんて言われてもイマイチ分からない。 祖母が亡くなって十年。 今日は、その祖母の十回忌があった。今は帰宅してノンビリ考えているところだ。 その十回忌には、私も、勿論私の両親も親戚も参加したが…はっきり言って空気は最悪だった。 彼女は痴呆だったのよ。混乱していたの。構って欲しくて嘘言ってたのよ。そんな、聞くに耐えない発言ばかりが飛び交っていた。全く、あの頃から何も変わっちゃいない。 元々政略結婚で人質同然に家に嫁いだ祖母の扱いは、我が家――沢城家では酷いものらしかった。長い間不妊で悩み、唯一身ごもった子は女子。昔は男子が重宝されていた時代。男子を産めない祖母の扱いは益々酷くなっただろう。それを想像するのは簡単だった。 挙げ句、ネバーランドは実在する発言。それは、痴呆や構って欲しくて嘘をついた、と歪曲された。 当然、私がどれだけ抗議しても、誰も信じてくれなかった。向こうにしてみれば、私は、祖母の話に感化された只の子供でしかない。そんな子供が何を喚いても、所詮は妄想。仕舞には両親まで同じ様な事を言い始めた。 あの日から、私は両親が嫌いになった。 だって、私がネバーランドが存在している、と証明出来ない様に、向こうもネバーランドが実在しない、と証明はしてくれてないのだ。 所謂、悪魔の証明だ。私がネバーランドが存在している証明をしていないのと同じ様に、彼らも、ネバーランドが存在していないという証明もしていない。 なのに向こうは存在しないと決め付けて、祖母を嘘つき呼ばわり。冗談じゃない。祖母は嘘つきなんかじゃないし、痴呆でもない。 ネバーランドは実在する。私が証明してみせる。 ……そう意気込んでみたはいいが、ネバーランドとか言われても…正直、かの有名なネズミのピーターパンくらいしか知識がない。後、ピーターパン症候群、だったかな。まんま私じゃん。 兎に角、私がネバーランドについて知ってる事はそれくらいだ。  
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