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これは、錆び……なのか?
風呂場の電灯は点けていない。
くそ、小さな窓から差し込む陽光だけじゃ、分かりにくい。
「ちょっと、陽一くん! なにやってるの!?」
メガネを外そうとした瞬間、僕はカミソリを落としてしまった。
「あ、僕もカバン探してて……」
「やめてよ! お風呂まだ掃除してないんだから!」
彼女はカバンを僕に渡し、風呂場から僕を追い出した。
「週末に会えるから、楽しみにしてるから、今日は帰って」
どこか疲れた様子の彼女を最後に、玄関のドアは閉まった。
僕はカカトを履き潰した靴のまま、自分の部屋で呆然と立ち尽くしていた。
週末、君と陽一くんは会えなかったんだよ、美紀……。
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