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「あ、打たれちゃったよ」
テレビの向こうの高校球児は、眩しそうに空を仰いでいた。
「なあ、女の子のカミソリも錆びるのか?」
外でセミがミンミンと鳴くなか、僕と美紀はソファーに座り、甲子園を観ている。
何の変哲もないカップルの日常で、些細な質問を彼女に投げた。
「え? どうしたの急に」
「いや、友達の話なんだけどさ。彼女のカミソリに、血のような錆があったんだって。それ以来、彼、血じゃないかって心配しちゃってさ」
「ああ、単に安いやつ使って、サビちゃったんじゃないの?」
「ああ、ね」なるほど。
呆気らかんと回答する本人に、僕は安堵した。
「たしかに、安そうなカミソリだった」
「えっ?」
「て、言ってた友達が」
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