4895人が本棚に入れています
本棚に追加
僕にとっては6度目の今日でも、この元カノで再現した彼女は、初めての7月13日。ifだ。
前回の失敗をリセットし、やり直せる。
恋愛シュミレーションゲームのようだけれど、僕の目的は美紀とのアバンチュールじゃない。
彼女の死因を探ること。
なのに、僕は今、彼女の膝枕でセミの合唱を聞いている。
何のことはない。「耳かきをしてくれ」って言ったんだ。
「どうしたの急に。今日の陽一くん、変だよ?」
戸惑いながらも、美紀はテーブルの箱からふわふわの耳掻きを出してくれた。
「ほら、おいで」と言って、折りたたんだ自身の膝をぽんぽんと叩く彼女の姿に、僕の涙腺が緩んだ。
ベランダから見えるのは真っ青な空に、うろこのような雲だった。
この安らぎ。
反面、彼女に感じる甘美な緊張感は、間違いなく小田美紀との時間だった。
彼女は短パンを履いていた。涙が膝まで届かないよう、鼻をこする仕草に必死だった。
最初のコメントを投稿しよう!