4895人が本棚に入れています
本棚に追加
僕は目的を忘れ、この永遠に輪廻する28℃の世界で、まどろんでいたいと願った。
「……暑いね」
「じゃあ離れたら? 耳のキレイキレイは、もう終わったよ」
僕はそのまま、彼女の膝から離れなかった。
今、この瞬間もすべて幻影。
そう分かっていても、願わくば、永遠にこの虚像のなかで僕は生きたい。
心なしか、落ち着きのないように見えた今日の美紀にも、安堵の表情が見えた。
幻の先の彼女は、何も変わっていない。
この世界で変わるのは、僕だけだった。
「……美紀」
「なあに、陽一くん?」
「愛してるよ」
心の底から、時空を越えても。
「……ありがとう」
最初のコメントを投稿しよう!