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僕はそいつを知っていた。
大林一樹は5年前に、確かに死んだ。
彼は小田美紀の〝元カレ〟だった。
次の瞬間、すべてを理解した僕は息を吸い込んだ。
「う、うあああああああああ!!」
「ひっ、あ!うわ!」
床に置かれたシャーペンを大林一樹の喉元に突き刺した瞬間、辺りが一変した。
握っていたはずのペンがなくなっても、僕の拳は開かないまま……いや、開けなかった──。
──その後、両親を問い詰めて真相が事実となった。
美紀は、死ぬまでの2週間の間、5年前に死んだ元カレと過ごしていたんだ。
本当の死因は腹上死だった。
美紀は2週間もの間、飲まず食わずで大林一樹の幻影と過ごしたんだ。
EX-Girlfriendでの出来事はあくまで幻影。
生身の当事者を含めた登場人物への暴行こそできないけれど、匂いも、味も、飲食も、生理現象も、すべて脳へと直接はたらきかけた幻覚だった。
世界中で、美紀のような死を遂げる事件が多発し、商品はすべて強制的に回収されていた。
けど、僕のように隠し持っている奴も世界中にたくさんいるだろう。
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