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僕は、震える唇にそっとキスをして、不ぞろいな歯を舌でなぞった。
これで、彼女は死ぬことはないだろう。
けど、とうとう彼女に真実を伝えられなかったなー。
僕は彼女の彼氏じゃない。
本当の陽一くんは、美紀が死んだ翌年に幸せな家庭を築いた。
あれ? 後追い自殺だったけな?
今日の僕は、自分が誰だったのかさえ思い出せずにいた。
EX-Girlfriendの最後の機能。
それは、他人に成りすませること。
この世界では、誰にでもなれるんだ。僕はその機能で陽一くんになった。
ベランダの向こうに広がる夜空に、北斗七星が見えた。
ああ、そうだ。ひとつ思い出した。
美紀、下着を盗んで、ごめんね。
心のなかでそう告白するなか、僕もゆっくりと目を伏せた。
EX-END.
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