1、消えた壇上のスポットライト

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教室を出てミウちゃんのとこまで走ると、キュっと上履きが廊下を鳴らす。 「こらそこ、廊下を走るんじゃないっ」 生徒が走っていればこう、とお決まりの言葉で先生に注意されてしまった。 「怒られてやんの」 「…ミウちゃんが急かすから」 「ニノが遅いのっ」 謝りながら、廊下の窓の外を見つめる。 今日の天気は曇。 寒空の下、半袖の体操服を着用して体育を受けなくてはならない。 この高校の決まりです。 「外寒そー」 「うん…」 「半袖とかさぁ、中学まででしょ普通」 「うんー…」 校庭に集まりだしたクラスメイトを見下ろしながら、私は上の空でミウちゃんに相槌を打っていた。 ふと思う。 “幸せの席”と呼ばれる場所に座っていたわりに、サメジマくんは死んでしまったじゃないか、と。 「逆に、席決めのくじ引きで運を使い果たしちゃったのか…」 「ん?」 「サメジマくん。幸せの席に座ってたのに」 「あぁ…まぁ、ね。交通事故なんて、運悪かったんだよ。そもそも幸せの席ったって、クラスの誰かが言い始めたことだし」
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