2、memory 今を思い出す日のため

3/17
前へ
/112ページ
次へ
サメジマくんの言うとおり、私も宿題出来てないので、振り向いてたとしてもノート貸してあげられなかったんだけど。 “粕ニさん” サメジマくんは、私のことをそう呼んでいました。 全く話たことのない男子でさえ、呼び捨てで呼んでくるのに。 「―…に」 そういえばあの時、サメジマくんの声だけは誰のものか分かった。 理由は考えなくても分かる。 毎日あれだけ男子と騒いでいたし、耳が勝手に、サメジマくんの声を聞き覚えてたんだ。 「粕ニ」 …誰? 「粕ニののか!」 カクンッ 机に肘を着いて乗せていた頭が、先生の声でズレ落ちた。 私は顔をあげる。 教壇に立つ先生の顔が怖い。 「粕ニぃ、お前はいつもいつも!」 「す、すみませっ」 「まだ朝のHRなんだが。寝るにしても早くないか?ん?」 「すみませんっ」 教室に沸く笑い声に、寝惚けた頭が覚醒します。
/112ページ

最初のコメントを投稿しよう!

452人が本棚に入れています
本棚に追加