らくがき【完結】

２、memory 今を思い出す日のため

順々にイスが引かれ、クラスメイトが自己紹介をしていく中。
私は１年前のことを思い出そうとしていた。

あの時は緊張してテンパっていて、細かく何を言ったかは覚えてないんだけど。

誰かに笑われたんだっけ…？

『次は…と、粕ニ？』

ハッ

え、ちょ…あのっ、まだ何も考えれてない…です。

昔のことより“今”が肝心。

１年前もこうやって先生に呼ばれて、立ち上がる間もまだ自己紹介の内容がまとまらずにいたんだ。

ガタ…、と自分のイスが床を鳴らすと、教室の静けさが際立つ。

『っ粕ニののかです。よくA型だとかO型とか言われますが違いますっ。じゅ、12月に生まれました。…あ、これは何か下さいとせがんでるワケではなくて、その……よろしくお願い、します』

自分の言葉に目が回る。

…カタン

席に着いた私の背中には汗がつたった。

去年の二の舞だ…。

学習しない、とはこのことをいうのでしょう。