5、遊園地の巨大迷路に必ずゴールがあるように

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  「ニノ?どこ行くの」 「えと…トイレ」 「珍しい。ニノが私を誘わず1人で行くなんて」 「もう3年生になるんだもん…ミウちゃんと同じクラスになれるか分からないし」 「え。2年と3年はそのまま、クラス持ち上がりだよ?」 …知らなかった。 「本当について行かなくてい?」 「ん、大丈夫」 「なんか、大人になったね」 ミウちゃんは優しく微笑む。 まるでお母さんみたい。 「トイレに1人で行けるようになったら、大人なの?」 「ニノの場合は。ほら、昼休み終わっちゃう前に行っておいで」 「はい」 そういえば、最近お母さんとお父さんにも、優しく微笑まれたことがあった。 ニノ、どこか大人っぽくなったね。って。 …そうだね。 嘘をつけるようになってしまった。 ある意味大人になってるのかも。 トイレに行くと言って出てきておきながら、私の足は屋上に向かってる。 今は、1人で考えごとをしたかった。 いつもは上ることのない階段を上って、立ち入り禁止のプレートを見つけて立ち止まる。 頑丈に閉じられたその扉の前には、使われてない机やイスが重ねられていた。 近寄るな、って言ってる。 じゃあどこへ行こうか。 高い所から、空でも見上げたい気分なのに。
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