5、遊園地の巨大迷路に必ずゴールがあるように

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  記憶と向きあって、サメジマくんと交わした言葉を探してみる。 まともな会話は、片手で数えられちゃうくらいしかないよ。 その内、私のほうから話しかけたことは無くて、もっぱらサメジマくんの気まぐれだね。 「…フフ」 今度は記憶を掘り起こして、サメジマくんについての情報を探してみる。 そうだなぁ…。 チェーンの付いた財布を持ち歩いてるから、それがズボンのポケットから出ちゃってジャラジャラ揺れるんだよね。 何度も、先生に注意されてた。 普段ニカっと笑うのに、笑いを堪えてる時は手の甲で口を隠すんだっけ。 1年生の時、同じクラスの男の子と喧嘩になった時は、ちょっぴり怖かったな。 周りから“ちゃらんぽらん”って言われてるグループに居たけど、サメジマくんは毎日宿題をしてくるような人で。 「クス」 時々、教室の入口でつまずいてた。 サメジマくんを囲む人はニコニコ笑ってた。 その中心にいつも居たよね。 『可哀想』 これは誰に言った言葉だったかな。 確か、女の子が上履きを履き崩してるのを見て、その足元に指を差して言ったんだっけ。 どこまで本気で言ってるのか分からない冗談を言ったりして。 それと…歯並びが綺麗。 身体検査はいつも引っかかってた。 ピアスは外してくるんだけど、穴が開いてるから先生にバレバレだったよ。
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